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ADS-Bトリヴィア

ADS-Bファンとして、日頃楽しんでいるADS-Bについて少し掘り下げてみましょう。


Capstone Program & Flight2000 Program
:Capstone

1990年代後半、連邦航空局(以下FAA)はアラスカ州での航空機事故防止と将来に渡る航空インフラを考慮して、Capstone Programの実証実験をアラスカ州南東部で行ないました。
コアテクノロジーとしてUAT(Universal Access Transceiver)によるデーターリンクとWAAS(Wide Area Argumentation System )によるGPS測位精度向上がありました。

背景としてアラスカ州は米本土他州と比べ人口密度が低く、地勢的にレーダー設備等に多大な設置・維持費用がかかり、多くの部分で航空管制(以下ATC)の空白地帯が存在していました。
事故の多くの場合が急激な天候の変化や、パイロットによる誤判断に起因するCFIT (Control Flight Into the Terrain)が関係している事が事故調査から判明しました。

※CFITとは事故の直接原因が機体制御不能に陥って結果事故に至る場合と反対に、事故直前までパイロットが機体を能動的に制御して危険な状況へ誘導する事を指します。
例えばATCから夜間のヴィジュアルアプローチを許可された(天候は全く問題ない状況で)パイロットが空港手前の灯火をランウェイライトと誤認して降下しクラッシュした場合等です。
CFIT大きなヒューマンファクターのひとつで、現在でも如何にしてて防ぐかを研究中です。

アラスカ州でのCFITの原因の一つとして地上援助施設の未整備があげられました。
レーダーサービスが得られない場所(空域)では、ATCが地上から指示もできません。
VOR(全方位無線標識)が受信出来ないような山間部では、自機の位置は目視で確認する以外ありませんでした。(視界が悪い場合は極めて難しい)
結果、パイロットの誤判断で目的の飛行経路を外れ、意図しない地形に遭遇し回避も出来ずに事故となりました。

この問題を解決するために、すでに一般的になっていたGPSによる測位とWAASによる精度向上とUATによるデータリンクで最新の気象状況をリアルタイムでパイロットに情報提供し、潜在的危険を予め周知し、回避する事になりました。
実証実験結果はシステムの信頼性を含め満足のゆくものでした。
この結果を元にFAAはFlight2000として全米にこのシステムを展開し、現在のNextGenプログラムに継承されています。

FAA NextGen program:
NextGen

航空管制について少しおさらいしましょう。
IFR(計器飛行)とVFR(有視界飛行)はご存知だとおもいます。
ATC的な見方をすれば、”VFRは勝手に飛んでろ!但し、絶対IFRを邪魔すんな!”と想像します。
IFR機は装備された航法機器を用いて予め登録したフライトプランに沿って飛行します。
無線航法時代になってからは、ADF、LOLAN、VOR(/DME)、GPS(/WAAS)と進化してきました。
(このいずれもが、地上ないし衛星で支援施設に依存します)
又完全独立航法としてはアポロ計画でも使われたINS(慣性航法)も初代のジャンボに搭載されました。(20年位前の-400でも装備されていましたね)
PSR SSR

一方ATC側でも一次エコーレーダー、二次レーダー、1090ES(拡張スキッタ)と進化してきました。
一次エコーレーダーは現在でも気象レーダーに代表される、対象物からの反射を表示するものです。
二次レーダーになると地上Interrogator(尋問)/ 機上Transponder (応答)の構成で、レーダー画面上に高度等も表示できるようになりました。
ATCコントローラーはレーダー上でセパレーション(同一高度で概ね2分間隔)を保つようにIFR機に対し指示をだしているようです。

FAAはこれまでVORを主とした航路をGPSを使ったRNAV(エリアナヴィゲーション)へ転換しつつあります。
この変更によって、以前と比べ直線航路をとりやすく結果飛行時間の短縮、燃料の節約、VOR/ILS(計器着陸装置)の維持管理費の軽減が期待されます。
(Geener Skies over the USAとして、2012年6月11日にロサンジェルス発シアトル行きアラスカ航空505便が、初めて運航されました)
又このNextGen Programの実施に伴って、現行のMode-A/C-Sトランスポンダー要件は変更されません。


テクノロジー:

ADS-Bファン(1090MHzES受信者)としてではなく、本来の主たるユーザーである航空管制の視点でシステムを見てみましょう。
ADS-BとはAutomatic Dependent Surveillance Broadcastの略であることはご存知のとおりです。 噛み砕いてみると
AutomaticとはInterrogator(問い合わせ信号)無しに定期的に
Dependentとは地上支援施設に依存せず、GPS/ WAASによって
Surveillanceとは ATC向け機体情報をレーダーのような監視機能をデーターリンクによって提供し
Broadcastとは機体の位置やその他の情報を地上施設や他の機体へ向けて放送する
システムです。
”機体の位置やその他の情報”の中にはGPSによる、速度(対地、上昇下降)、方位、高度やATCより指定された高度も含まれます。
(全てがGPSからの情報ですから、コクピット内の情報と一致しません。 例、対気速度や機首方位など)
実際に米国内ではADS-Bサービスに関して1090MHzと978MHzの周波数帯が用いられています。
ADS-Bの利点として周波数資源の有効利用もあるのですが、1090MHzでは既存のトランスポンダーやTCAS(衝突防止システム)に加えて今回の1090SE(ADS-B Out)が加わり、これ以上の情報をのせる余地がありません。
そこで978MHz帯(又はUAT、Universal Access Transceiver)を用いて、ADS-B Out機能を担う事となりました。(現在米国内と中国の一部で運用されています)

余談ですが、元日本航空のパイロットで当時中国の民間チャーター(ビジネスジェットでエアバスA320の機長さんです)の方から、中国の航空法は基本FAR(連邦航空法)の完全コピーで、FARを知っている人であれば等価的に中国の航空法も理解している事となるそうです。
UAT 1090ES

978MHz帯は米国内では航空通信に用意され、現状データーリンク(気象情報等)に利用されています。 (日本の電波法は不明)
FAAでは現在の周波数資源の状況や将来に渡る拡張性を考慮し、18000フィート以上(Flight Level 180 and above = Class-A airspace)に於いては1090SE ADS-B Out、以下の高度では978SE ADS-B Outと区分けし、2020年1月1日から米国空域下での全ての航空機に適用されます。
(個人的な疑問ですが、FL180以上への上昇中又はFL180から降下中のFL180以下の航空機は978が必須なのかは疑問です。 製品群をみると1090と978を単体でサポートする製品はみあたりませんので、予めFL180以上の高度で巡航する場合はFL180以下でも1090SEでカバーするものと想像します)
978MHzでは無料で提供される気象情報等のデーターリンクにも用いられており、将来的な拡張性も担保されています。
気象情報を含む情報サービスをFIS-B(Flight Information Service Broadcastの略でフィスビーと読んでいます)で、地上局から放送されます。
機上ではPFD(Primary Flight Display)等画面にデコードされた気象データーをオーバーレイで表示し、周辺の気象状況をほぼリアルタイムでパイロットに提供できます。
(多くの商業機ではウェザーレーダーを装備していて、外部依存せずに気象情報を得られましたが、ジェネラル・アヴィエーション(以下GA)では、機器自体が高額であったり、搭載スペースの問題もあり、一部の高級機でしか実装されていないのが現実でした)
気象データの他に氷結情報や臨時飛行制限空域(TFR)などの重要な情報も合わせて放送されます。


ADS-B In:

InとOutを整理して、ADS-B機器を搭載している機体を中心に放送する事を”Out”、受信する機能を”In"と定義付けされています。
ここまでは主にADS-B Outについて記述してきましたが、ADS-B Inについても記します。 主なADS-B In施設は地上基地局と航空機になります。
地上局では受信したADS-B Out信号をデコードし画像処理した後、画面(レーダー画面と等価)にプロットされます。
一方機体側では近傍のADS-B Outデータを受信(ADS-B In)し、周辺の航空機の状態(方位、速度、高度、上昇/降下率と潜在的な異常接近)をPFD又は独立した機器等に表示し、必要に応じて回避行動をとります。
TCAS(Traffic alert and Collision Avoidance Systemでティーキャスと呼ばれています)
は非常に信頼性が高く、TCASの回避行動指示はATC指示より上位に位置づけられ、これより上位の指示は、失速警報、ウインドシアー警報、対地警報があります。
GAにとっては比較的安価に格段に安全性が向上します。
現在のFARではADS-B Inはオプションとなっていますが、多くのGA機体(個人所有のセスナ単発等でも)でも装着率が上がってきているようです。
Garmin


アメリカ以外のADS-B事情:

既に記しました通り、米空域では2020年1月1日より1090ESとUATが必須要件となります。
それ以外の地域では1090ESが必須要件とされ2020年相前後して世界中の空域で標準化される様です。(ヨーロッパ;2016年6月8日、香港;FL290以上12月8日2016年など)

ADS-Bその他:
2020年正式運用に際し、幾つかのトピックスが進行中のようです。
ADS-Bファンとしては、ダイバーシティー・アンテナですね。
1090ESの第一の目的として地上局に向けて放送します。 従ってアンテナは機体下部に設置されますが、飛行機の機動によって対地上局に対して遮蔽されてしまいます。 (旋回中とか、フラップ展開、エンジン自体等など)
これを補うために、機体上部にも放送アンテナを設置し、前著の遮蔽問題と、自機より高い高度の機体(ADS-B In)に対しての改善をはかります。
実際には2セットのADS-B Out装置を装備し、交互に放送を行なうようにするようですが、これも必須ではなくオプションです。

又、プライバシーに関しても論議されています。
商用機体であれば問題は低いですが、個人所有のビジネスジェット(アメリカでは結構な数に上ります)ですと、個人の移動軌跡が公開されてしまう恐れがある為です。
(例として、有名なプロゴルファー、アーノルド・パーマー氏の自家用ジェットの機体登録番号末尾2文字は歴代APです。)N1AP


ADS-C:
現在HF(SSB)で行なわれている洋上管制についてADS-Cなるシステムで置き換えのアイデアがある模様です。
ADS-B Outデータをイリジウムやインマルサット経由で地上に中継し管制するようです。
因みに-Cはコントラクトの意味で、商用衛星を使う関係上、商業契約を締結する関係で付いた名称かと想像します。
これが展開されるとHFエアバンドファンとしては困ったもので、何も聞こえなくなってしまいます。

終わりに:
米国居住のADS-Bファンであれば、Class-A空域だけでなく以下の高度を飛行する機体のデータを取得する為に、2セットのレシーバーが必要で、同時表示となればそれなりに環境を整えなければなりません。
幸い日本ではUATは適用されないと考えられます。
暫くは、現状で楽しめるようですね。
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星空、アマチュア無線、バイク、旅行。 それでもやっぱり大好きだった飛行機。
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